久世光彦氏逝去。 |
ショック。今年はなぜ、悲しいことが続くのだろう。
久世さんは、私の憧れの人だった。
彼のキャスティングは私の琴線を揺らし続けたし、
人のこころの奥底を見据えた描写は、私のこころを深く打った。
いつか彼に会えるといいな、と思ったら、サシで話をするという機会を得る
ことができた。2004年8月7日のことである。
今、読み返してもついこないだのように感じる。彼は、甘味処の店員さんに
「日本語の使い方がおかしい!」とやさしく注意していた。
間違っていれば、注意をする。昔はそんなことは珍しくなかったが、
今は他人に注意することなんて皆無になってきているように思う。
色気のある老紳士だった。田中裕子の定まらない目線がいいというところも、
目のつけどころが違うな、と思わせた。
彼は乱歩が好きなだけあって、作品には不可思議な世界や、時代の暗さ、
エロティックな世界がいつも同居していた。
彼が生む世界が奇妙な分、彼自身も尽きない魅力があった。
インタビューの写真を「いいのが撮れたら送ってくれ、葬儀に使うから」と
笑いながら言っていたが…こんなことになろうとは。