追悼・三木たかし |
三木たかしさんのメロディは素朴なようでいて、実はとてもユニークだと感じていた。技巧派のピッチャーのような見事な変化球を投げ続けるタイプ。絶妙な匙加減なので気がつく人は少ないが、“ここで半音を下げるというのがおもしろいな”とか“ここは楽譜にフェルマータを入れてるんだろうな”などと感じさせるものがあるのである。もっとも、フェルマータなんて今のJ−POPでは使わないだろう。しかし70年代の歌謡曲には、それがあった感じがする。今思うと、それが妙に新鮮に感じられる。
今の日本は“同じテンポ”で流れることをよしとするので、テンポを落とす/停めることなどは認めないのかもしれない。だからこそ、フェルマータのように拍節を落とす音楽は求められるのではないだろうか。停めることのよさを、音楽を通して考えてもらえればいいと私は思う。
■三木たかしさんの曲は名曲ぞろいだが、なかでも伊藤咲子さんの曲が好きだ
■しばたはつみさんのファンキーな〈濡れた情熱〉(75年)も素敵
■技巧派がいかんなく発揮された、しばたはつみさんの〈夜はドラマティック〉(78年)
いやはや、大変な才能である。これほどの才能がある人が去ってしまう、何ともいえない哀しさ…。もっともっと素晴らしい曲を書いていただきたかった。無念で仕方がない。