一番下の弟からの驚くような提案 |
最寄り駅から電車に乗り、大分駅へ行く。驚くほどキレイになっており、構内は自由が丘駅のようである。それまでの数十年は何だったのかと思えるほど、ここ10年で大分市は変貌を遂げた。大分駅の裏側にある町の暗さや重さは、もはや面影もない。
大分駅で乗り換え、東へ。我が家と反対方向にあるせいか、記憶にある限り足を踏み入れたこともない町だ。駅から10分ほど歩くと、友人の母の老人保健施設はあった。
友人の母に会うのが目的だったが、地元の老人保健施設はどんなところなのかも興味があった。集団部屋であるせいか、そこにある人間模様も垣間みれる。最近は老人保健施設と特別養護老人ホームの区別がなくなり、終身入所している人も少なくない。
そんな中、友人の母と現在のこと、私と友人の学生の頃のことなどで、話に花が咲く。友人のお母さんは鬱病だったというが、その面影はない。もともと快活で生命力のある方だったので、介護にほど遠いタイプに思えていた。ただ娘を愛しすぎて、依存症のようにも時折感じることがあった。その娘が夫の転勤で神奈川県に住まいを構えたため、淋しさのあまり鬱状態になったのであろう。歩けないと言い張っていた脚も、すっかり治っている様子。杖でじゅうぶん歩けそうだった。
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この日の夜、一番下の弟が実家に立ち寄る。母を含めたこれからの家族のことについて、話をする。一番下の弟は父の跡を継いで経営者になったせいか、家族の中で最もしっかりしてきたように思う。帰るたびに驚くような提案をしてくるが、家族のことを最も考えているように感じている。
私に比べると、一番下の弟ははるかにイイ子だ。彼は幼い頃、すぐ下の弟が高校を中退して家を出たせいか、家族と距離のあるすぐ下の弟に非常に気を遣う。遠慮せずに言いたいことを言ってしまう私と違い、彼はとてもデリケートだ。思い悩むタイプの一番下の弟と、年に一度落ち込むことがあるかないかの姉。対照的な兄弟だ。