家族を繋ぐために |
まずは墓参り。家族揃って墓を磨き、手を合わせた。天気にも恵まれ、墓参りにはとてもよい日となった。その帰りに市内の柞原八幡宮で初詣。ここは、宇佐八幡宮の分祀だと言われているが、私たちにとっては遠足の目的地として親しんだ場所である。樹齢3000年といわれるクスの大木もあり、この木を見つめるだけでも、清心な気持ちになる。
柞原八幡宮が魅力的なのは、参拝の際に廻廊を通って拝殿に入れることである。また参拝の前には、太鼓を叩くのがならわしとなっている。廻廊には1700年代に描かれた絵が残されていて、これを鑑賞するのも楽しみの一つだ。ただ創建されたのは827(天長4)年というから、それから1000年近くもあとに描かれたということになる。
その後、私たちは久住高原を目指した。久住高原は阿蘇・くじゅう国立公園の中にある。熊本からそれほど離れておらず、九州のほぼ中央に位置するところにある。
久住高原の家は、生前父が買ったものであったが、私はこれまで二回しか行ったことがない。訪れたのはいずれも、積雪の多い真冬であった。地元にいる弟は、何かあるとここへ来て泊まって帰るらしい。ただそれだけで、気分転換になるという。夏は緑豊かでクーラーいらず、冬は純白の雪に包まれる場所。
それでも父が生きている頃は、「家なんか贅沢だし、いいんじゃない?」と私は減らず口を叩いた。しかしこうして家族全員揃って、鍋を食べているのを見ると、父が家族を繋ぐために用意したかのようにも思われた。ふだんケンカの多い、私たちのために。
早朝、兄弟3人で雪の中を散歩した。とても珍しいことだったが、これだけでいい正月だったと私は思っている。