インパクト。 |
その後も、たくさんいいグラフィックデザイナーと出会ってきた。仕事で路上ライブの写真を使いたいことがあったのだが、あいにく写真がなく、撮影も厳しい。だがあるデザイナーはシャボン玉をやっている写真を“路上ライブ”に見えるようにトリミングしてきた。こういうデザイナーと会うと、出会いに感謝したくなる。
ただインパクトを求めるのであれば、仕事をはじめた頃に出会ったデザイナーやトリミングのうまいデザイナーだと、やや線が細い気がした。レコード店やクラブへ行くと、ものすごい量のフライヤーが並んでいることがある。多いところで一店舗で30〜50枚のフライヤーが置いてあるところがあるが、そのなかにあれば、デザインにインパクトがなければ沈んでしまう。盛況しているパーティは、やはりフライヤーがいいものだ。フライヤーをもっていく人が多い=人気のパーティだと、どのハコのスタッフも口を揃えて言う。
そんななか、ひときわ目立つのがIPPIさん(FLOWER OF LIFE)のデザイン。これはイヤでも目立つ。個人的には特別趣味じゃないが(笑)、一度見ると忘れられない。今じゃFLOWER OF LIFEときくと、彼のデザインを思い浮かべない人はいないだろう。
彼のデザインをはじめて観た時、日本人の作品ではないだろうと思っていた。ヒプノシスからの影響を受けた、ヨーロッパのグラフィックデザイナーではないかと思っていたのだ。だから制作者が日本人ときいて、ひどく驚いたことを覚えている。日本人にあのようなHAPPYな絵がつくれるのか、と。
デザインの力は大きい。理屈であれば、その内容と真意を理解するまである程度の時間が必要だが、デザインはわずか0.5秒程度で、そのこころをとらえてしまう。最近は性能で差別化することが難しくなってきているから、デザインで勝負をかける企業も多い。力のあるデザイナーは、これからますます重宝されるに違いない。