父の一周忌(1) |
搭乗口に行くと、大分の天候が電光掲示板に出ている。
雨、8℃。
東京は晴れているせいか、雨だとは夢にも思わなかった。
大分空港へ着くと、やはり雨が降っていた。それでホーバーに乗ることをやめ、空港から高速バスに乗る。窓ガラスを打つ、雨のしずく。それをしばらくながめていると、あっという間に、新川のあたりになっていた。
竹町でバスを降り、安い傘を買えるところを探す。府内五番街を駆け足で行くと、一件の化粧品屋さんの前に傘が並んでいた。「これください!」と私が大きな声を出すと、ひとりの女性が顔を出す。「ああ…傘ね」というと、彼女は私のコートに雨のしずくが流れていることに気がついた様子。さっと奥から一枚のタオルを差し出し、「これを使ってください」と言う。温かい。私は雨に打たれて、現地調達で傘を買うことが何度かあったが、タオルを差し出されたことは未だかつてない。帰省するたび思うのだが、大分の人はやさしい人が多い。これは郷土の誇りだ。
傘を買ったあとで、しばらく府内五番街を歩く。土曜日というのに、人が少ない。雨だからだろうが、今日は平日だったっけ?と思うほどに、街は閑散としていた。
トキハ(大分の百貨店)前からバスに乗り、自宅へ帰る。