『新潮45』8月号。 |
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届いたなかの一冊である『新潮45』を読む。この雑誌は以前一度だけ、購入したことがある。どことなくテイストが70年代の雑誌に近いものがある気がするのだが、気のせいだろうか。
読みたかったのは、為末さんとビートたけしさんの対談。早速、読んでみる。為末さんは5月生まれで早熟型。スポーツ選手は、4・5・6月生まれが圧倒的に多いのだという。…確かに。私もたけしさんと同じ早生まれで2月生まれなのだが、何事も遅咲きだった。そのうち出だしが遅く、コツをつかんでからぐんと伸びる、というのが私のリズムになってきたように思う。思えば音楽をやっているのは、早生まれが多いな(笑)。スポーツ挫折組なのだろうか。これが2〜3カ月後に生まれた、下の学年といっしょにスポーツをやっていたら、もっと小さい頃からスポーツが好きになっていたかもしれない。
またたけしさんは、為末さんの〈走る〉ということの科学的な分析について素晴らしいと語る。得てしてスポーツの世界は精神論になりがちだが、為末さんは黒人・白人・日本人と骨格の角度まで研究している、と。私自身も為末さんのこういった分析がおもしろいなあ、と感じていた。音楽の世界も同じで、歌詞に込められた内容の分析や精神論が多く、私はそういった音楽雑誌に全く興味がもてなかった。作り手のなかには“周波数の帯域を考えて、高域がほしいから摩擦音の多いことばを入れた”などという人もいるのに(笑)、なぜメンバーの脱退がこの曲を生んだりするんだろう…などと雑誌を見ながら思っていたのだ。そういう意味で精神論を唱えたエッセイのような雑誌より、音楽制作にまつわる音づくりの雑誌のほうが、はるかに音楽のことを語っていると思う。そのあたりから、物事の科学的な分析はおもしろい!と感じるようになった気がする。
また、為末さんは“陸上競技はどのようなアングルから見せればいいと思いますか”とたけしさんに訊ねる。世界の北野に向けて、いい質問!たけしさんはリーフェンシュタールの『民族の祭典』を挙げる。残念ながら私はこれを観ていないのでなんとも言えないが、俯瞰からの構図が有名らしい。個人的には定番だが、クロード・ルルシュの『白い恋人たち』や、たけしさんが挙げている市川崑監督の『東京オリンピック』がおススメ。思えば、洗練された映像を撮る監督ばかりだ。スポーツは絵になるんだなあ。
かつて私はなぜ、世の中にはオリンピック映画(ドキュメント)が多いのだろう、と思ったことがある。どうやら60年代はテレビでオリンピックを観戦することができなかったため、映画になったらしい(そんな単純なこと…)。10代の頃は『白い恋人たち』はラブロマンスだと思っていたが(アホ)、実際観ると競技シーンばかりでびっくりした!そういえばこの映画は、当時の彼の部屋で観たなあ。今思うと、懐かしい想い出かも。