手数が少ない。 |
クール・ストラッティンということばは“格好よく歩く”という意味。もちろん人生観のことを言っているのだが、なんだか為末さんの著書にも通じるような気がするなあ(笑)。
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黒人音楽のなかでこれはスゴイ!と思う手法のひとつに、手数が少ないということがある。たとえば黒人音楽のドラムのキック(バスドラともいう。ドンという最も低い音)だけを聴いてみてほしい。ダンスをしている人はたいがいこのキックを聴いて踊っているのだが、このキックをどう入れるかが黒人音楽の肝なのである。キックは数ではなく、どこに入れるかが最大の焦点で、そこにセンスを問われる。だから手数が少なくグルーヴ感を出せるアーティストに、私は深く感動を覚えてしまうのだ。
“手数が少なくて、グルーヴ感を出せる”というのは、ポイントをつかむのがうまいといえる。やみくもに行うのではなく、効果をしっかりと狙えているわけである。これはどんな物事にも、通じるところがあると思う。
私は不器用なので、まったくの模倣をあまりやりたがらない。人と同じようにやっていても遅れをとってしまうし、そこで嫌いになることも多いので、模倣をあまりせずに生きてきた。その代償としてどんな物事に対してもポイントをつかもうとしてきたし、それを探すのがとてもおもしろかった。そうやってじっくりと、自分らしさを育ててきたように思う。