〈架空〉をモチーフとしたビジネス。 |
それにしても先輩から「うらやましい」と言われる為末さん。本当にスゴイと思う。彼は有言実行で押し進めるタイプだから、不可能を可能に変えるエネルギーも持ち合わせてしまうんだろうと思う。
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伊勢丹と三越が統合。三越は若年層を獲得するのは難しそうだ。それに本腰を入れて獲得しようと思っていないようにも見受けられる。一方、伊勢丹は店舗が少ないのがネックだが、収益はわりと上がっているように思う。それに百貨店のなかではイメージがイイほうではないだろうか。少なくとも、ファッションに興味のある人には支持されている気がする。テナントの入れ方はもちろん、その対応も早い。新宿の伊勢丹にテナントで入ったというと、アパレル業界で売れている、という印象をもってしまうくらいだ。
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今から10年くらい前、架空ビジネスと言ったらいいのだろうか。架空の世界をモチーフにして、企画展開を行うことが増えていったように思う。そのきっかけとなったのは、砂原良徳さんのアルバム『THE SOUND OF´70s』である。新宿の都庁跡(すでに「跡」にされている話からはじまる(笑))に架空の空港をつくり、そこから航空機が飛ぶというコンセプトのもと、つくられたアルバムだった。
砂原さんは、ただ架空の空港ではおもしろくないと言い、この空港に飛んでいるのは本物の航空機でなければならないと考えた。それで世界各国の航空会社に自ら(!)連絡を取り、私のつくる架空の空港に使うロゴを貸してくださいと嘆願した。航空会社のロゴはある種、国を象徴するものであるから、多くの航空会社は「君は正気なのか」「ロゴを何だと思っている」とキツいことばも返ってきたようだ。しかしなかには「おもしろい!」「やってみたい」と好意的な反応もあり、いくつかの航空会社は彼の架空の空港にロゴを提供した。
この架空空港はデザインにも定評があった。架空とはいえ、空港内にあるハンバーガーショップのハンバーガー1個にいたるまで、しっかりとデザインしていたからだ。ちなみに手がけたのは、常磐響さん。ランボールギーニのカウンタックを購入したが、免許はこれから(笑)というグラフィックデザイナー/写真家である。
砂原さん以降、架空をモチーフにしたビジネスは、増えてきたように思う。架空のなかにわずかなリアルのエッセンスを入れることにより、企画がぐんと真実味を増し、おもしろいからだろう。企画・展開の方法はいろいろとあるが、彼の手法には非常に驚かされた。