大野克夫さんの作品。 |
大野克夫さんというと、75年あたりの沢田研二の歌を作曲していたことで知られる。この頃の大野克夫さんは非常に輝いていて、捨て曲がほとんどない。素晴らしいセンスの持ち主。入れるものなら、この時代の井上尭之バンドに入りたいくらいだ(笑)。
■沢田研二(1)
〈勝手にしやがれ〉はイントロだけでやられてしまう(笑)。これを思いつくこと自体が素晴らしい。ホーンセクションも最高で何度聴いても飽きることがない。日本に残る屈指の名曲である。沢田さんの衣裳とパフォーマンスも素敵。
※アフロのヒゲ男が大野さん。阿久悠さんも登場!かっこいい男ばかり。
■沢田研二(2)
〈カサブランカ・ダンディ〉のピアノとベースのフレーズが最高にかっこいい。黒っぽい音楽が好きな人は、このあたりでKOされるのではないか。阿久悠さんの才気あふれる歌詞と、沢田研二さんの妖婉さも加わり、非常におもしろい作品に仕上がっている。
■沢田研二(3)
その一方でこういった曲もつくっていた。〈悪魔のようなあいつ〉のテーマ曲である。この曲をはじめて聴いたとき、こういった3拍子の妙なコード進行の曲もつくっていたんだな、と思った。ただ井上尭之さんのギターが入ってくると、それっぽいと感じてしまう。井上尭之さんのギターは、いつもビートルズを思わせる。
こちらを見ると、大野さんの一家は音楽に囲まれた環境にあったらしい。お金持ちの息子だったのだろう。尺八と琴をやっている夫婦の家なんて、想像するだけでセンスが磨かれそうだ。ピッチがルーズな楽器を小さい頃から耳にしてるなんて、恵まれすぎている(笑)。しかも子どもの頃のエピソードが最高におもしろい。ギターと湯のみの実験は、天才ぶりをうかがわせる。
オルガンの音の立ち上がりの話もおもしろい。確かに立ち上がりが甘いとイヤという気持ちはよくわかる。黒っぽい音楽はリズムがシャープでなくてはならないのに、甘いなんて許せないだろうな(笑)。
“楽器があると、どうしても自分の好きなコード範囲のものしか出ない”か…。彼はギターもピアノもできるから、コードのパターンもたくさん持っているはずだが、作風を拡げるために自らそれを課していたんだろう。(ちなみにギターとピアノは楽器の構造の特性から、弾きやすいコードが全く異なる。ギターで弾きやすいコードはピアノで弾きにくく、ピアノで弾きやすいコードはギターで弾きにくいことが多い)メロディーを譜面にすることで、楽器の構造に縛られず手癖になびかず、アレンジを無限にしたわけである。こういった心がけがあってこそ、彼の作品は羽ばたいたんだと思う。
またこちらのサイトを見ると、彼が絶対音感を持っていて、小学生の頃からアレンジのようなことをやっていたことがわかる。それにしても大野さんも音楽と運動、数学が似ていると感じていたんだなあ。だからこそ彼は黒っぽい音楽を得意とするのだろう。
…こうしてつらつらと書いていると、彼の幻のメロディーシリーズが欲しくなった。買おうかな。