半田健人さんの聴く70年代歌謡曲。 |
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かなり淋しい気持ちになったなあ。ああ…私が愛していたミュージックマガジンはどこへ。この特集はいったいどんな人に向けて組んだものなのだろう。歌謡曲を知らない世代に向けてなのか、それとも当時歌謡曲を聴いていた人なのだろうか。パラパラと見た限りでは、どちらからも受け入れてもらえない内容だった。歌謡曲を知らない世代なら背景をもっと説明すべきだし、歌謡曲を聴いていた世代ならあの100選はないだろう。どっちつかずの内容で、これはないなあと思ってしまった。
岩崎宏美さんは〈ロマンス〉で、野口五郎さんは〈私鉄沿線〉かあ…。あまりにも直球すぎる。ミュージックマガジンなら岩崎宏美さん〈センチメンタル〉、野口五郎さん〈グッドラック〉くらいにしてくれれば、もう少し触手が伸びたのに。あくまでも基本アイテムでのセレクトというのであれば、もう少し背景を深く切り込んで欲しかった。さようなら、ミュージックマガジン。
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ただこのミュージックマガジンに掲載されていた半田健人さんには、注目していた。彼は1984年生まれだと聞いていたので、最初は“ふん!80年代生まれに、70年代歌謡曲がわかるはずがない”と思っていたのだが(笑)、あまりにも研究熱心なのでこの発言は撤回したいと思っている。半田さんのような方がいて、とてもうれしい。歌謡曲を得意とする近田春夫さんも、下の『タモリ倶楽部』では一本取られている様子だった。(これ、リアルタイムではなぜか見逃していた。惜しいことをしたなあ)
■タモリ倶楽部(1)
■タモリ倶楽部(2)
■タモリ倶楽部(3)
また、こちらではピンクレディの〈サウスポー〉を解説している。歌手が大きな賞をいただいて泣いているときこそ、オケがきっちり聴こえて楽しいということばには笑ってしまった。ヘッドフォンで聴かなきゃダメというのは、山下達郎さんの影響か?私はどちらかというと阿久悠さん派でヘッドフォンではなく、スピーカーから大音量で聴きたいタイプ。これはうちの父の影響が大きいのかもしれない。
70年代は16ビートが生まれた時代。それに加えフィラデルフィアソウルやサルソウルなどが出てきたせいか、オーケストラ編成になっていくためアレンジも複雑で多様だ。だからこそ、この時代の音楽はとてもユニークで上質だ。しかもパソコンもない時代だから、ひとつひとつ譜面を書いていくしかない。今のJ-POPには越えられない、職人技が光っている。
この番組では生前の阿久悠さんも登場している。晩年の彼はテレビに出ることもほとんどなくなってしまっていたが、彼の想いをもっと聞きたかったな。
個人的にはどこかで、初期の岩崎宏美さんの特集でもしていただけないかな、などと思っている。筒美京平、阿久悠、岩崎宏美のお三方は、歌謡曲の錬金術士のようなもの。一人抜けては成立しないような独特の世界がある。知りたいこともたくさんあるから、ぜひともどこかで特集を組んでいただきたいと思っている。