虚構のなかで、演じきる。 |
市川崑さんといえば、非常に洗練された映像を撮ることで知られていた。彼のつくる絵は、常に洒落ていて美しい。日本のゴダールと言っても、過言ではないくらいだ。
先日、東京オリンピックのことを私は書いた。もし2016年に東京オリンピックが実現したら、ぜひともその様子を市川崑監督にご覧になっていただきたいと思っていたのだが、とても残念だ。
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私はもともと、映画制作会社がつくるテレビ番組が好きだった。カメラワークや編集、ファッション、音楽。どれをとっても、かっこいい。それが映画制作会社がつくるテレビ番組というイメージだ。70年代の頃、たいがい刑事ドラマは映画制作会社がつくっていたようだ。たとえばこちらの『キーハンター』。私は微妙に覚えている(!)。我ながらすごい(笑)。もちろん内容は理解できなかったけれど、このオープニング曲は知っていた。確かあの『Gメン75』がはじまるまでは、この番組を放送していたはず。『日本昔ばなし』〜『クイズダービー』〜『8時だヨ!全員集合』〜『Gメンン75』と日本人なら誰もが、観ていた番組。TBS独占の黄金時代だったと思う。
■今、観てもかっこいい『Gメン75』。この絵にしようと思いつくところがスゴイ。
故・丹波哲郎氏はダンディで非常に素敵だ。彼に匹敵する俳優は、平成の世にはいない。昔の俳優は、生まれながらにして俳優という圧倒的な魅力を放っていた。そういった逸材をテレビや映画で観るというのが、最大のエンターテイメントだったのだと思う。
私はエンターテイメントに夢を観たいタイプだから、スーパースターがいてほしいと思うタイプだ。俳優や歌手は虚像であっていい。タレントがみんなブログをやっているという今の時代に全くそぐわないが(笑)、プロとして虚構のなかで演じきってほしいと願う。松田優作さんや山口百恵さん、沢田研二さんが輝いていたのは、彼らが持つ演出力だ。そこに一億人の日本人が、惹かれてしまったわけである。
現実ばかり叩きつける世の中では、ロマンに欠ける。うまくダマされるのは、時に楽しい。