山口百恵さんのスタッフが語る、制作秘話。 |
『視点・論点』は解説者が一人でひたすら話をする番組だから、説得力がないとツライ。彼女に限らずこの番組は抑揚のない話をする人も多いが、あの番組を観るたび日本人は話がヘタだなあ、と思う。私も決して話がうまいほうではないので、あれを観て自分のことも振り返りたいと思った。プレゼン力を鍛えねば。
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〈文章を読む〉ということでふと、こちらを思い出した。山口百恵さんの引退番組で、彼女自ら歌手になるまでのことを語っているのだが、非常にうまい。間のとり方や抑揚にとても魅力があり、人を惹き込む。さすが勘がよく、演者として定評のある彼女だけあるなあ、と思った。昭和52年当時は、彼女はわずか18歳。それでこの語り口はすごい。並々ならぬ度胸もあるのだろう。
また山口百恵さんに携わっていたスタッフが語る、制作秘話を見つけた。どこの現場もそうだが、制作話というのは本当におもしろい。たわいのない事柄がビッグヒットにつながったり、スタッフの意外な一面が見えたりで、人々の興味を誘う。
まずは百恵さんのシングルジャケットを撮っていた、篠山紀信さんのインタビュー。セットした髪を崩したり、感情を逆撫ですることで、百恵さんの新しい魅力を発掘する。カメラマンは、人の感情を手玉にとるくらいの力量がなければならないのだろう。
次に登場するのが、振付師の西条満さん。百恵さんはどっしりとしていてごくふつうの女の子でありながら、ステージでは輝きを増すといった話をする。最近思うのだが、演じることを生業とするには自意識が薄いくらいの人のほうが向いているのではないのだろうか。たとえば浅野忠信さんや役所広司さん、笠智衆さんなど、演じることに才能を発揮する人は、みな素顔がフラットのように感じる。まあそれだけ本番にかける〈エネルギー〉や〈集中力〉が半端ではないのだろう。本番一発で別人になりきれるくらいの力量が必要だから、自意識過剰であれば心身ともにもたないというのもあるのかもしれない。
最後に登場するのが、ホリプロダクションの堀威夫会長。彼女の現場での姿を語りながら、マネージメントの極意を話す。太く短く美しく去った彼女を、彼は特攻隊のようだと言う。特攻隊はともかく、日本はもちろんアジアまでも席巻した百恵人気。それをつくりあげた彼のマネージメント力というのは、白眉に値するものだと思う。