年齢を重ねて花開く。 |
『熱中時代』は教師編になってから、ほとんど観ていない。生意気だった私は、自分と同じ年齢くらいの子どもたちが出演する番組に興味が持てなかったのだろう。ただ、うちのすぐ下の弟はこちらのほうが大好きで、いつも観ていた気がする。いずれにしろ当時の水谷豊さんは高視聴率男で、ドラマに出演すると驚くような視聴率(40%越え!)をはじきだしていた。ただ彼はチンピラのような役柄が多かったこともあり、息の長い役者というタイプではないだろうと子どものくせにタカをくくっていたのである。
ところが彼はドラマ『相棒』で主役を務め、GW公開の劇場編の大入りも期待されている。いわば私の予想に反して、第一線で続けてこられた素晴らしい俳優なのである。先日、劇場編の彼のインタビューを耳にしたときに、彼のこころ遣いに胸を打たれてしまった。『相棒』の準主役といえる寺脇康文さんが水谷さんを抱きかかえるシーンで“どうすれば自分の体重をかけずに、相手が抱えやすくなるか”を常に考えていたようだ。こういった周囲への何気ない配慮があるからこそ、今があるのかもしれないと思ってしまった。
20代の水谷さんを観ていた私にとっては、正直言って今の姿が想像できなかった。今の彼はずいぶん落ち着いていて、ことば少なげに感じてしまう。人は変わるものである。
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想像できなかったといえば、岸部一徳さんの活躍も私には想像できなかった。GS時代の彼のことは全く存じ上げなかったので、私の記憶のある彼というとやはり同窓会名義のタイガースである。当時は弟のシローさんのほうが知名度が高かった気がする。少なくとも子どもの私は、弟のシローさんのほうしか気に留めてなかったのである。(インタビュー時 右端:沢田研二さん、左から二番目:岸部一徳さん、左端:シローさん)
岸部一徳さんは今や、ドラマや映画に欠かせない名脇役になっている。セリフの一言一言に重みがあり、悪役をやると恐怖感におののいてしまうくらいだ。彼を見ていると人は年齢を重ねて花開くこともあるんだなあ、と思う。勇気を与える人である。