日本の音楽を動かしてきた人。 |
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“大スターがいたほうがいい”と思うのは私だけではなく、石坂敬一さんもそう思っているようだ。石坂敬一さんはユニバーサルミュージックの会長で、日本レコード協会の会長でもある。(こちらをご参照ください)この方は洋楽のレコードに帯をつけたり、オリジナリティあふれる邦題をつけて、日本のレコード業界を大きく動かした方である。ピンク・フロイドの『原始心母』もそうだし、ナイスの『少年易老学難成』も彼が命名したタイトルだ。しかもジョンレノンが亡くなった日から東芝EMIにスーツを着て出勤したという逸話も残っている。とてもユニークな方だ。私は彼の発想がとても好きで、20代のときに彼の本を古本屋で買いあさったこともある。
石坂さんにとても興味があったので、彼はいつもどのように仕事をしているのだろうかと思っていた。実はこれを、調べてみたことがある。こちらは、ユニバーサルの取締役の鈴木伸子さんのインタビューだ。そのなかに石坂さんの仕事ぶりが書いてあった。話には聞いてあったが、やはりとても厳しい人らしい。石坂さんと鈴木さんはいつも衝突しているようだし、鈴木さんは社内の評判が悪いとおっしゃっているけれど、むしろ私には非常にいい社風に感じてしまった。言いたいことが言えて正論が通るからこそ、衝突したり評判が悪いなどと言えるのだろう。私のまわりにはなぜかユニバーサルに務めている方が多いが、ほとんど会社を辞めている人はいない。新入社員のときからずっとユニバーサルにいらっしゃる方ばかりだ。
そんなユニークなお人柄をもつ石坂敬一さんのインタビューが、今月のミュージックマガジンに載っていた。それで興味深く読ませていただくことにした。“大スターがいたほうがいい”という発言はもちろん、“歌謡曲はプロの作詞家がいて、プロの作曲家がいた”などということも話している。これはいつもここで私が書いていることと同じだ。しかも最近はシングルを大事にしないアーティストが増えている、などということも語っている。確かにそうだと思う。松田聖子さんくらいまでの時代(82年くらい)はシングルのA面はもちろん、B面のクオリティも驚くほど高い。今のシングル曲は彼女のB面のクオリティにはるかに及ばないと思う。
石坂さんはプロデューサーの質が低いとおっしゃっていたが、それに加えディレクターの質も落ちている気がする。石坂さんや若松宗雄さんのような敏腕ディレクターがいればいいのだが、最近はディレクターの名前さえ聞くことがない。
それにしても石坂さんは相変わらずお洒落だ。サラリーマン然としていないし、ましてや団塊の世代でこういうスーツの着こなしをする人は少ない。彼はやはりユニークな方だと思う。