ドラマ『阿久悠物語』を観て。 |
私がリアルタイムで観ていたのは、阿久さんのいうスター誕生の3期目くらいからである。ピンクレディや石野真子さんがあの番組にシロウトとして挑戦していたのを、この目で観た記憶がある。1期目は私が幼すぎたというのもあるし、大分ではおそらく放送されてもいなかっただろうと思う。だから昌子・淳子・百恵の中3トリオは、私が気がついたときにはいたのである。2期にあたる岩崎宏美さんもそうだった。
リアルタイムで観ていた世代にとって今回のドラマは、当時のものとしてできるだけ観ないようにしようと思った。あくまでもドラマで架空の世界だと。だからわりとすんなり入れたと思う。後楽園ホールのステージなんて、本当によくできていると感心した。ただ、キーボードがKORGのTritonだったのが残念。スタッフに音楽に強い人間がいなかったのか。都倉俊一氏の車検のステッカーは当時風につくっていたにもかかわらず、そんな落ち度があるとは(笑)。
阿久さんと松田トシさんの厳しいことばが、なんだか恋しく思えた。あのお二方は本当に厳しかったけれど、洞察力が確かだったから審査して欲しかった人も少なくないのではないだろうか。一生の問題だから本音が聞けないとツライという挑戦者の女の子がいたが、気持ちはよくわかる。当時はあのお二方に対して非難するような人はいたのだろうか。少なくとも私はそれを耳にしたことがない。モンスターピアレンツも、困ったちゃんもおそらくいなかったのではないだろうか。
当時の大人は厳しかったけれど、温かかった。今の大人はやさしいけれど、冷たい気がする。この温度差はいったいどこから生まれてきたのだろうか。