要望に応え、改善する。 |
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昔の資生堂のCMは、おもしろいものが多い。こちらは私も初めて観たのだが、素晴らしいなと思った。コピーは「なぜ化粧をするの?」という哲学的な問いにはじまり、その答えというべき「知らない自分に遭うのがうれしい」と言うだけ。そして最後に「粧」という文字が表れる。
■美しく、劇的。日本は、化粧の歴史も長い。
数十億かけて旬の女優を集めてつくったTSUBAKIのCMより、こちらのほうがはるかに魅力的だ。音楽も素敵だしなあ。
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今日も左足の消毒のため、病院へ。主治医は今週いっぱい外来がないため、ほかの医師が担当してくれた。ベッドの上に足を乗せてください、と言われる。K医長は筋トレ派(足をあげて消毒)だったんですがね、と言うとその医師は笑っていた。
ここの病院は若い医師が多いですね、と話すとその医師は、こう見えても僕は30歳越えているんです、と応えた。30歳そこそこだと、医師ではまだ新人でしかないのだろう。担当医になることも少なく、他の医師のフォローにあたっていることが多い。病院の掲示板にも医師の名前は表示されず、〈整形新患1〉と入るだけ。他人様のカラダを担当するようになるまでは、少なくとも修養は10年以上必要なのだろう。僕はまだまだ6〜7年なので、と彼は静かな笑みを浮かべた。
骨折をして思ったのだが、整形外科というのはデザイナーにも近い。患者の要望に応え、機能が不全だったところを改善する仕事だからだ。人間のカラダ自体がものの見事にデザインされてあるものだから、壊れた時もとの機能が果たせるようになるのは、非常に難しいもの。しかし腕のいい整形外科医なら、そこへ導ける。それもできる限り、美しい手法で。
入院中にいっしょだった中国の女の子が肘を骨折したときに、うちでは手に負えないからとどこの病院でも追い出されていた。やっとのことで辿りついたのが、ここの病院である。レントゲンで撮ってみると彼女の肘の骨はなんと6つに割れていたようだが、ここのS医長は見事につなぎきることができたのだ。正直、これにはショックだった。この一件で、思わず自分の仕事を振り返ったね(笑)。
他人様の仕事を見ていると、学ぶことが多い。人間も仕事もやはりおもしろいわ。