寺山修司の本『思い出さないで』(71年)。 |
*これがお洒落な街(笑)、自由が丘。実に庶民的な魅力たっぷりと思うんだがな〜
*IDEE前。IDEEがあるとお洒落なのか…? ともかく今日はとても混んでいた
その店の近所まではわりに行くのだが、店自体は知らなかった。彼女は「ええっと思うところに、ひっそりと置いてあった」と言っていたが、本当に意外な店にごくひっそりとある(笑)。実物を見たらちょっとイメージと違うなあと思い、結局は買わなかった・・・(ごめんなさい)
しかし別の買い物をした。古本屋で寺山修司さんの本『思い出さないで』(71年)である。表紙が宇野亜喜良さんでなかなか素敵。この本が5,000円(発売当時:650円)。寺山修司×宇野亜喜良の本は人気が高いので、お値段も張る。しかしこの本がまた刷られることはないだろうと思われるので、持っておこうと考えた。内容も実に素敵なんだよなあ。この正方形のような版型も好き。
紙芝居と称する〈便所のマリア〉の話や歌の本と称する〈木の匙〉など、独特の世界でとてもおもしろい。今見てもかなりエキサイティングだ。ここでは〈海も恋する〉の一節を紹介したいと思う。
*夏物語
〈7才の夏〉
はじめて煙草を飲んだ。
といっても、ぼくはそれを花火だと思っていたのだ。
「大人たちは、いつも花火を口にくわえている」
いつかきっと爆発するだろう。ぼくの家の裏通りには娼家がならんでいて、
赤い帯をしどけなくしめた娼婦がうたっている。
線香花火のかなしみは
さよならをいうひまもない
だが、ぼくのくわえた花火は、いつまでたって花ひらかず、
ぼくはただ頭だけが痛くなった。
〈23才の夏〉
夏………………季節の四人兄弟のなかでいちばんの浮気者
夏………………詩には麦藁帽子がよく似合う
夏………………秋のために思い出をつくる
夏………………海の欲情を数えよう
夏………………ジャズっ子たちはクジラに乗ってやってくる
夏………………殺人者たちの邂逅
夏………………雲は吃りの旅行者
夏………………ベットの中の兎さがし
夏………………毛深い親指がマダムを追いかけます。機関銃もなしに
夏………………古典の死
実にユーモアが効いている。しかも私のこころの奥深くに沈んだ感情を、引っぱり出してくれるような詩。ここしばらくは彼の本に、没頭するだろうな。