日本の音楽の未来を支えること。 |
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私の師匠であるカフェ・アプレミディの武田誠さんが、クレプスキュールの『ブリュッセルより愛をこめて』やチェリー・レッドの『ピローズ&プレイヤーズ』のことについて書いてある。私も10代のときにこのアルバムを、擦り切れるほど聴いたな。当時バイトしていた洋服屋でも、ひたすら流していたくらい好きだった。
武田誠さんというといつだったか「アーティストを好むも好まざるも関係なく、年末は紅白歌合戦を必ず観る」とおっしゃっていた。さすが音楽をこころから愛している武田さんらしい発言だなと、感服した覚えがある。日本人のポピュラー音楽といえば、歌謡曲。それを家族揃って観るのが、紅白歌合戦だ。10代の頃は私も紅白歌合戦なんて…と思っていたこともあるが、年齢を重ねていくと歌謡曲や紅白歌合戦の大きさが痛感できるようになってきた。“老若男女揃って、日本の音楽を堪能する”こんな機会は、今の日本において紅白歌合戦のほかにはない。
今回の紅白歌合戦には、Mr.Childrenが出場するらしい。私はミスチルに全く興味がなく、曲もほとんど知らない。けれど今回出場を決めたときに「歌に共感してくれた人たち、そして大切な仲間と一緒に音に奏でて、今年最後の日を迎えられるなんて、なんて幸せなことだろう」と答えたようだが、これを聞いて少し彼らが好きになった。日本の音楽を楽しむ祭典、その一員として参画することは、とても意味のあることである。私は音楽好きのひとりとして、彼らが紅白歌合戦に出場してくれたことを、とてもうれしく思う。
日本の音楽家が紅白歌合戦を大切にすることは、〈日本の音楽の未来を支えること〉だと私は思っている。なぜなら先述の通り“老若男女揃って、日本の音楽を堪能する”唯一の機会だからだ。さまざまな世代の人が、こたつを囲んで日本の音楽を知り、それについて語り合う。これは本当に素晴らしいことだ。
日本の音楽家の方々が、紅白歌合戦に出場することに前向きになってほしい。それをこころから願っている。