高みにあるものは、高みのままでいい。 |
しかしながら、こういう人はわりに多いのではないかと思う。自分のやれることのちょっと高めのところを学んだり、知りたいと思うのはごく当たり前の人間の心理ではないだろうか。知的好奇心というのは、だいたいこういうところから来ているのだと思う。
そのせいか、マニアが好むものは無くなりにくい。不況にも圧倒的に強い。たとえば東京FMの山下達郎さんの『サンデーソングブック』。この番組はおもしろいことに、一般のリスナーが聴くような選曲は一切やっていない。80年代までの黒っぽい音楽が中心で、プロデューサー特集やアレンジャー特集などが多い。洋楽のバイヤーだった私ですら、知らない曲もある。しかしコアな洋楽ファンとは思えない、ふつうの主婦も聴いているのだ。理由はわからないが、そういう人たちも聴いていておもしろいんだと思う。もちろんコアな音楽ファンは、この選曲が大好きである。それで18年続いている。
要は高みにあるものは、高みのままでいいのだ。むしろそれが色であり、魅力なのだと思う。
そのせいかマニアが好むインディーズレーベルは、とても元気だ。TwitterでフォローしているVIVID SOUNDさんも、昔から姿勢が変わることなくおもしろい音源をリリースし、私たちを驚かせてくれる。音源の掘り方の深度に、たゆまぬ音楽への愛情を感じるのだ。
実はこの現象、顕在化しているようで、『ミュージックマガジン』2月号に、P−ヴァインやウルトラ・ヴァイヴなどの配給がとても目につくと書いてある。ベックやレディオヘッドなど洋楽の大物アーティストが、どんどんインディーズに流れているというのだ。インディーズに対してある意味、信頼を寄せているのであろう。これは洋楽にとって、明るい幕開けではないかとすら思えている。しかもここには、最近気になっていた〈ぎんざNOW!〉のことまで、書いてあった。ただ書いているのが高橋修さんなので、諸手を挙げて喜べないが(笑)。
その一方で、個人的に好ましく思えなかったことが書いてあった。某レコード会社の社長が話していた、音楽サービス。たとえば銀行で口座を開くと、アーティストの曲がダウンロードできる、とか。もう音楽は単なるサービスとなり、音源をエンドユーザーに売買するものではなくなってしまうわけである。これを見て、音楽業界はここまで落ちてしまったのか…と感じてしまった。これでは己の首を絞めることになるのではないか?
そもそもこういうサービスは、音楽ファンが最も嫌うことだ。ターゲット層が違うといえばそれまでだけれど、私自身は虫酸が走るほどイヤだ。音楽に対する愛情が全く感じられない。
大手とインディーズのあまりの温度差に、愕然としてしまった。