実相寺昭雄トークショー1 |
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まず一人一人が、実相寺監督との想い出を語った。中堀正夫さんは、初めて会った実相寺監督に対して“なんて汚い人なんだろう”と思ったそうである。また中堀正夫さん曰く、実相寺監督はクランクインの初日に周囲を驚かすようなことをやって、士気を高めるのが好きだったのだという。たとえば、武士を撮る時にちょんまげの真後ろにカメラを置いて撮りはじめて驚かせたり…(笑)、とにかくエピソードに関しては、枚挙に暇がないようである。
牛場賢二さんは20歳すぎた頃くらいに、実相寺昭雄監督のもとで働いていたが、いつも〈バカ照明〉だと言われていたようだ。当時は若かったせいか、照明のつくり方はおろか何もわからないでやっていたので、仕方がなかったと振り返る。
個人的に思うのだが、実相寺監督の作品においてカメラマンと照明に携わった方というのは幸せである。あれほどカメラマンと照明が目立つ作品は、彼の作品をおいて他にないであろう。実相寺監督の作品でカメラマンと照明は、花形だ。とにかく強烈に印象に残る。
原口智生さんは『帝都物語』(88年)で実相寺作品に関わったとおっしゃられていたが、当時岡本喜八監督が撮るはずだったことを話していた。また高橋巖さんは東宝ビルトの警備がまだ甘かった頃、塀を乗り越えて中へ入り(笑)、「何でもいいので手伝わせてくれ」と実相寺監督に懇願したところが出逢いなんだという。しかし実相寺監督は「お前は姉がいるのか?」とたずね、高橋巖さんは首を振ると「じゃ、妹はいるのか?」とたずねてきたらしい。再び高橋巖さんは首を振ると「…じゃ、ダメだ」と言ったようだ(笑:とはいえ、いっしょに働くのだが)。
女優のひし美ゆり子さんは「私は当時、監督とまともに話せませんでした」と振り返る。ただ実相寺監督が亡くなる前に対談をする機会があり、「ウルトラセブン 第8話『狙われた街』での君は素晴らしい」とおっしゃっていたようだ。しかしそれをひし美さん本人が確認すると、逆光でハレーションを起こしているようなシーンだったらしい。(でも実際にこれは、素晴らしいシーンである)。
他にも公衆電話に置いてあるような、風俗店のカードをコレクションするのが趣味だっただとか(笑)、懸賞があたると電話がかかってきて呼び出されるだとか(笑)、とにかく趣味人としての顔を持ち合わせていた方なんだということがわかった。
■『狙われない街』での1シーン。メトロン星人とウルトラセブンが、ちゃぶ台で会談する。