秋山晶さんのコピー。 |
いつだったか、松たか子さんがテレビのリモコンのことを、家では〈ズバコン〉と呼んでいると言っていた。どうやら昔、そういった商品があったというのだが、番組出演者はみな知らないと言う。私も正直言って知らなかったのだが、youtubeにその〈ズバコン〉のCMを見つけたので、ご覧になっていただきたい。なんとチャンネルが自動的にぐるぐると回っている!これはびっくり。しかも当時の物価から考えると、〈ズバコン〉はかなり高い!
一方、こちらでは、テレコがついた(!)テレビ。これも初めて見た。うちには当時テレコがあったが、テレビ番組を録ることはできなかった。当時はビデオもなかったし、端子もテレビにはついてなかったから、テレコをテレビの前に置くのが精一杯だったと思う(笑)。
番外編として、アンディ・ウォホール出演のビデオテープCM。「イマ人を刺激する」か。80年代っぽいせいか、今観るとちょっと恥ずかしい。私はリアルタイムで80年代の文化にどっぷりのはずなのだが、今観るとどうも80年代が苦手…。妙に尖っているのが、ダメなんだろうな。ちなみにこのコピーをつくったのは、真木準さんらしい。
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好きなコピーライターというと、ダントツで秋山晶さん。彼のつくったコピーの本を読むと、恋しているかのように今もドキドキしてしまう。サッポロビールの「男は黙ってサッポロビール」は彼の代表作であるが、それ以上に素晴らしいコピーがたくさんある。キャノンの「ただ一度のものが、僕は好きだ。」とか、カロリーメイトの「精神力だけでは、テープを切れない」など(デザインと併せて観てほしい)、名コピーを世に輩出してきた方だ。
記憶の片隅に残っているのは、やはり70年代のキューピーのシリーズ。百恵ちゃんの出演した赤いシリーズの提供が、キューピーだったような気がする。幼いながら、このキューピーのCMは何か違うぞ!と感じていた。野菜がニューヨークの街の上を飛んでいたり、画面いっぱいに野菜の根っこが映っていたり。コピーは含蓄のある一言のみで終わってしまうような…それはそれはインパクトの強いものだった。
彼がこちらで書いているように、ライターは文字の送りや漢字とひらがな、バランスを考えなくてはならない。文章のリズムとともに、見栄えを配分し、ことばのインパクトを狙う。新聞や雑誌の世界ではこれを効果的に狙うためのひとつとして、校正がある。校正は必ずしも、媒体の文字の整合性を担っているものではない。効果もきちんと狙っていると思う。そのため記者やライターは用字用語辞典を持っているのがふつうだが、キャリアの長い人だと媒体によって文字のひらく/ひらかないを覚えており、ごく自然に書き分けられるものだ。
文章は何度書いても、難しいものだと思う。訓練すればある程度ウマくなるものだが、秋山さんのようにひとつの世界観へ昇華させるのは、生き方が伴わなければならない。ことばは生き方に直結して、はじめて活きてくる。だからこそ、ことばは魅力的なのだと思う。