児童文学と天地真理。 |
録画しているものを観ると、ハイジがあまりにも無邪気でびっくりする。大人はなぜか子どもは無邪気と思い込むが、私は子どもが無邪気とは思っていない。現に自分が子どもの頃、同級生が無邪気だったかと言われると、そうでもなかった気がするからだ。もちろん無邪気な人もいたが、大人とそれほど変わらないように感じていた。経験が少なかった分、知恵が働かなかっただけで、ずる賢い子どももたくさんいたと思う。だから子どもが無邪気というのは、大人の勝手な思い込みだという気がする。
ハイジは無邪気だけれど、想像以上にたくましい。ペーターにも、かなりの勢いでツッコむ。動物たちもカラダを張って守る。こんなにしっかりしていたかな、と思うのだが、当時はハイジのしっかりしていた部分をかなり見落としていたようだ。厭世的なおじいさんも、今じゃその気持ちもわかる気がする(笑)。当時はなぜおじいさんはあんな風になってしまうのだろう、と思っていたのだが。(くわしくはこちらの〈えほん〉をご覧ください)
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アルプスの少女ハイジをやっていた頃、人気だったアイドルといえば天地真理さんがいる。私の記憶に残る最古の(失礼…)アイドルである。その天地真理さんの出演する番組で、人形劇を使って外国の文学を放送する番組があった。おそらく『とびだせ!真理ちゃん』『アタック!真理ちゃん』あたりではないかと思う。この番組のなかで『若草物語』をやったり、『赤毛のアン』あたりをやっていたので、私は外国文学にとても興味をもつようになった。いわばあらすじをこの番組で知り、小学校に行きはじめてこれらの本を借りていくようになるのである。
なかでもよく覚えているのが、この番組でやっていた『アルト・ハイデルベルグ』。幼い私がこの文学の名前を覚えられるわけがなく、真理さんが演じていたケティという主役の女性の名前と、この女性がビールを飲める場所で働いていたという情報だけを頼りに、図書館で探し続けたのだ。インターネットもない時代だから、本を広げてはシラミつぶしに探していったことを覚えている。やがて高学年になった頃、それが『アルト・ハイデルベルグ』だということを知る。
『アルト・ハイデルベルグ』は『若草物語』や『赤毛のアン』のような児童文学ではなく戯曲なので、想像以上に時間がかかったのだろう。ただ子どもながらに、路線が少し違うということを感じていたせいか、強烈に印象に残った。悲恋を描いた物語で、主人公が飲み屋で働く娘(!)だったことも、子どもの私には驚きだったに違いない。
70年代は今と同じように、アイドルを起用した番組も多々あったが、わりと格調が高かったように思う。この番組をきっかけに、私は本が大好きな女の子に育つ。しかも私は、かなりのテレビっ子だったようだ。