“わんぱくでもいい。たくましく育ってほしい” |
かくいう私は、物持ちのいい人が好きである。どちらかというと苦手なタイプだなあ、と思っていた女性が、カラー液晶でない(!)携帯をもっていたときとても驚いた反面、少し好感を持ってしまった(笑)。そこをツッコむと「これでいいんです」と言う。携帯に興味がないのか、物を大切にするタイプなのか判然としないのだけれど、彼女がグリーンの画面の携帯を使って仕事をしているのかと思うと、ファニーでかわいいと感じる。
携帯といえば、うちの母にはじめて携帯を渡したのは、私である。彼女はその携帯をなくしてしまい、そのあと、亡くなった父の携帯を使っている。最近は充電してもすぐに足りなくなってしまうようで、私は「古い機種だから、そういうことが起きるんじゃない?」と言うと、「古くはないでしょう?」と彼女は切り返した。私も本当に古いと思っているわけではないのだが、世の中の人はだいたい一年に1回は携帯を買い替えているくらいだから、そういうものなんだとどこかで感じてしまっている。そして彼女は「なぜ一年に1回のペースで携帯を交えるの?」と怪訝そうな顔をした。正直、私もわからない…。
電化製品を生産している会社は、古い製品のフォローをすることが人々に喜ばれる最高のCSRではないかと思う。採算が合わないなどと言われそうだが(笑)、木を植えるよりははるかに現実味を帯びているのではないだろうか。
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中古レコード、古本、古い電化製品が好きな私は、相変わらず昭和好きである。youtubeでは、懐かしい映像をまた見つけてしまった。丸大ハムのCMである。“わんぱくでもいい。たくましく育ってほしい”というコピーで知られている、あのコマーシャルだ。そもそも〈わんぱく〉が死語である。今は〈わんぱく〉な子どもなんているのかさえ、よくわからない。自然のなかで遊ぶ子どもの姿が、ほとんど想像できなくなってしまった。
子どもはもちろん、こういった父親の姿も今じゃ全く見られないのではないだろうか。だいたいここまでキツく叱らない、叱れないのが最近のオヤジなんだと思う。いや叱るどころか、家族のなかで最も肩身の狭い思いをしているのが、父親の姿だったりする。サザエさんの波平さんや、大草原の小さな家の父親なんて、歴史物なんだろうな。
心身ともにたくましく、紳士だった昭和の男像は、はかなく消えてしまったようだ。