告別式で。 |
父の親戚、母の身内、友人…。なかでも父の取引先の人が多かった。
なかには新聞で見たから、という人もいた。
交友関係の広い父だった。手前味噌だが、あれほど人から愛される人は、そういないだろうと思う。
父の霊体を前に、私は告別式で父の思い出を語った。
アドリブだったが、不思議なくらいことばがあふれてきた。
その後、父の棺に参列者が花を入れた。
ほかにも父が好きだったCD、競馬の本、結婚前の父と母の写真、ルルの写真、俊也が贈った父お気に入りのジャケットなど。
思い出をたくさんつめて、父の棺を火葬場へと運んだ。
人間のからだはあっというまに、かたちを失う。
どんな功績を残した人でも、どんなろくでなしでも。
みんな最終的には白い骨になるだけだ。
1時間半ほどで、父のからだは骨のみになった。
火葬場の人は、骨のなかから“のどぼとけ”を拾った。
遺骨を入れるつぼの一番上に、これを乗せるのが流儀らしい。
のどぼとけは、本当に仏様の姿をしていた。
父のものは、極めて立派なかたちだった。
骨つぼにはたくさんの骨が入らない。
仕方がないのだろうが、父の骨を押し込む姿が娘の私には、
ひどく気にさわった。
それでも骨は全部入らない。捨てられてしまうのかと思うと、
心が痛む。
そこで私は火葬場の人に「ハンカチに包んで持ち帰っていいですか?」と
聞く。それを聞いていた叔父は私たち兄弟のために、小さな骨つぼを
私たちのために買ってくれた。
うちの親戚、いとこは本当に仲がいい。
これも父が“愛される人”であるから、今があるのだろう。