今やほとんど逢うことのない人。 |
クリスマスですね!みなさんチキンやケーキを食べたのでしょうか?
#
ここ数日かけて、年賀状を書き終えた。本日投函。たぶん元旦に着くはず。
年賀状はほとんど逢うことのない人にも、出すことがある。その一人が某大手レコード会社の社員。彼は私と同じ年齢で今や部長になっているのだが、営業なので逢う機会がほとんどなくなってしまった。
彼が新入社員の頃だったと思う。20才も年長の先輩に連れられて、彼は私が働いていた店にやってきた。ちょっぴりぽっちゃりしていて、かばんを斜めがけにしていたその社員は、妙におとなしそうに見えた。ただその店のスタッフはみんな親しみやすいキャラクターで、どんなレコード会社の社員とも仲良くなれる。彼ともあっという間に親しくなったのだと思う。なにせその店は妙にレコード会社の社員が集まってしまう“息抜きの店(笑)”とまで言われた場所だ。彼らは営業が終わるとその店で休憩して帰るのが、習慣になっていた。そんなレコード会社の社員ばかりを集めて、私たちは忘年会をよくやったものだった。
そのレコード会社の社員は早稲田大学出身だったが、「僕は英語がほとんどできない」と言っていた。彼の同期に慶応大学出身がいるのだが、僕は彼にとても及ばないと話していたのだった。そのかわり彼は話術が得意で、いつも私たちを笑わせる。商品知識もしっかり入れていて、アンテナも確かだった。
ある日彼に「レコード会社を受けるときに、どんな試験があったの?」と訊ねてみた。すると彼は「好きな本と、その感想だったと思う」と答えた。「ちなみにどんな本を選んだの?」と訊ねると、井上ひさしの『ブンとフン』だと言う。当時は“また、冗談でしょ”と笑ったのだが、今思うとなかなかいいセレクトだと感じる。多くの人が選ぶ定番の本でもなく、かといって難解な本でもない。しかも洒落が効いていそうだ。私が仮に採用担当でも、彼を残しておきたいと感じてしまう。
そんな彼は営業担当として、都内でレコード店をまわっていた。2〜3年ほど経った頃だっただろうか、彼は地方を廻りたいと自ら志願して、東北地区の担当になってしまった。横浜出身の彼がなぜわざわざ東北へ?と思ったのだが、彼らしい気もした。私たちは彼とお別れ会を行い、彼を笑顔で送り出した。
それから数年後、彼は東北で実績を出し、東京へ呼び戻された。都内でも相変わらず、成績がよいと風の噂に聞いていた。あっという間に彼は同期の出世頭となり、今や部長。どんな部長になっているのか、仕事の現場をのぞいてみたい気がする。
年賀状を書いていると、懐かしい人の懐かしい想い出がフラッシュバックする。こういう時間を味わうのも楽しい。